(古民家をリノベーションし、パン屋さんをはじめた福永さん。
自宅兼店舗で子育てを楽しみながら、
自分の「やってみたい」をどんどんかたちにしていきます。)

「やりたいこと」をかたちにするって楽しい!

福永 愛子さん(山口県長門市出身 東京都からUターン)
[ぱんころりんオーナー] [筆文字デザイナー]

福永さんが長門市に帰るまで(移住の経緯)

福永さんは長門市で生まれ育ち、高校を卒業後、専門学校進学を機に東京へ。東京でテレビ番組の美術を制作する会社に11年勤務していました。仕事自体はとても楽しく、クオリティも上がり、信頼を得て人脈も広がる一方で「人間としての成長が少なくなっている」と感じるようになり、「このまま続けていても、スキルは伸びていくかもしれないけれど、内面の伸びしろがほとんどないだろうな。」
「今の仕事よりも、もっと面白いものがあるんじゃないだろうか。」
と考えるようになったそう。一番大きかったのは30歳を過ぎて、
「家庭を持ちたい、子どもを育ててみたい。」
という思いが芽生えたこと。自分の思う「内面の成長」が結婚や子育てにあると思い、『旦那さんや子どもと接して、家庭を守る』そういった当時の自分からは遠い世界だった未知のジャンルに挑戦してみようと思い立ちます。「基本的に家事は苦手だけど、だからこそやってみたくなったというか。そこに飛び込んだ自分がどんな風に成長するのか、見てみたくなったんです。ただ、東京で子育てをする自分が想像できなくて・・・。それで、Uターンを決意というか、とりあえず仕事を辞めて長門にいったん戻ろうって。そんな感じで帰ってきちゃいました。」

  
(東京時代・ドラマ撮影現場で真剣な表情の福永さん)

宮古島での出会い

元々漠然と何か飲食系のお店をやりたいなと思っていた福永さん。具体的なイメージを膨らませる為、旅行がてら訪れた沖縄県宮古島。そこでのゲストハウス滞在時、足を運んだ『子育てママさんたちが通うカフェ』で次なる目標を見つけます。せっかくなら、自分が生まれ育った土地でやりたいと思っていた福永さんは、そのカフェで感じた『親子が寛げる雰囲気のお店』にヒントを得たそうです。「こういうお店、長門にはきっとないだろうな・・・やってみようかな。」とカフェ開業について調べ始めます。“カフェをはじめるには”といったようなカフェ開業のためのマニュアル本を熟読し、「よし!やれる!長門に帰ろう!(笑)」と。ここから『親子カフェ』開業物語がはじまったのです。

  
(宮古島でのゲストハウス生活。育てていたゴーヤが実ったころ、長門市に戻ってきました(笑)。)

親子カフェ[あいころりん]オープン。

もともとDIYが好きだった福永さん。長門市駅前にあるビジネスホテルのテナントを仲間と共に自身で改装し、2017年春、長門市初となる親子でのんびりと寛げるおしゃれなカフェ[あいころりん]を開業。「私はお店を作って、料理はお母さんが作って、デザート・パンはお姉ちゃんに作ってもらおう。」そんな風にしてできたお店は、市内で『子ども連れのお母さんがくつろげる場所』というイメージが定着し、「こんな風に子どもと過ごせる店があったらいいなって思ってたから嬉しい。」と言う、子育てママ達の支持を得て、たくさんの固定客がつきました。

  
(友人とあいころりん改装中。完成した店内は明るい光が差し込む素敵な空間。)
  
(子どもと一緒にのんびり寛げる店内。筆者も子ども達を連れてよくお邪魔しました。)

長門で生きていく

[あいころりん]を改装する際、地元の同級生と一緒に手伝ってくれた一人のリノベーション好きの男性。一緒に作業をしていく中で自然と二人は惹かれあい、2018年結婚。新生活の拠点に選んだのは、近年再開発で盛り上がりを見せている長門湯本温泉から少し離れた、湯本 三ノ瀬(そうのせ)地区。古くから萩焼で栄えたのどかな里に建つ古民家を購入し、中を改造。ご主人に「こんな風にやりたいんだけど、どうしたらいい?」と相談しながら、大きな工事は業者さんにやってもらい、その後を自分達でリノベーション。「せっかく新しく古民家に住むんだからいろいろやりたいな。」という思いから、ゲストハウス用の部屋を作ったり、パンやお菓子を焼く場所を作ったり。「自分の好きな事をできるって本当に楽しいですよ」「Uターンして、生活リズムが整って、ストレスなく生活できているし、やりたいと思うことにどんどん挑戦できる環境が最高です。」と福永さんは笑顔で話す。

  
(パン厨房の窓サイズを確認するご主人。ご主人の父親の幼馴染の大工さんと大きな工事終了後の記念撮影。)
  
(のどかな里山のたつ自宅兼お店。どこかほっこりする雰囲気の素敵なリビング。)

出産、そして新たなステージへ(パンころりんの開業)

結婚し、古民家に住み始めてから1年目の2020年春、第1子となる男の子を出産した福永さんは、子どもの成長を見守りながらできる仕事をしたいという思いもあり、『親子カフェ』として人気店だった[あいころりん]を閉め、自宅である古民家でパン屋さんを始める事に。パンを焼くお姉さんも、3人のお子様の子育て真っ最中という事もあり、無理のないペースで週2回のんびりと、古民家パン屋さん[パンころりん]をはじめました。「本当はゲストハウスを先にやりたかったんだけど、コロナ禍のご時世、あまり室内でわいわいできるような状況ではないし、もともとパン屋さんをやりたいという思いもあって、先にパン屋さん始めちゃいました。」あどけない笑顔の向こうにこれから先の「やりたい!」を見据えるように、キラキラとした目が輝いていました。

  
(専用のスペースでパンを焼くお姉さん。おやつパンから、ハード系まで様々な種類のパンが並びます。)

子育てをする中で改めて感じた長門の魅力

地域のおじいちゃん・おばあちゃんが子どもの事を本当にかわいがってくれるんです。妊娠中も「いつかね~まだかね~」と、誕生を心待ちにしてくれて。生まれたら、まるで自分の孫のように喜んでくれて。あと、子どもの事で病院に行った時に、看護師さんや先生が子どもの顔を覚えててくれて、「あら~、一平君またきたの~。」って優しく接してくれて。

「うまく言えないけど、やっぱり長門は人が温かいところがいいな~って思います。」

と話す福永さん。お隣のおばあちゃんは、毎日のように手づくりの煮物を届けてくれるそうです。「この前、主人の実家から筍をたくさんもらったんだけど、私料理は得意じゃないから、お隣さんにお裾分けしたら、煮物になってかえってきたの~(笑)。」そう笑いながら話す福永さんは、お隣のおばあちゃんの作った旬の野菜の煮物を食べながら、のんびりと家族時間を過ごしている時に、しみじみと長門に帰ってきてよかったと思うそうです。「あとはやっぱり実家が近いってありがたいなって思いますね。子育てをする中で、近くに頼れる人がいるということが、こんなにも心強いものなんだって、改めて感じています。両親、お姉ちゃんが近くにいるから今の自分がありますね。」
福永さんのご主人も長門市出身で、農家である実家のご両親は、今度1歳の誕生日を迎える一平君の為に、一升餅をつくと張り切っているそうです。「いや、実はそれもやりたかったことの一つで、なんだろう、旦那の親族に喜ばれる感覚?を味わってみたかったっていうか。」と笑う。

  
(おばあちゃんが大好きな一平君。自宅のキッチンでお母さんに茶碗蒸しを習う福永さん。)
  
(もうすぐ1歳の誕生日を迎える一平君。あんよも上手です。一生餅頑張ってかついでね。)

長門の好き

海あり山ありで、美味しい海の幸、山の幸が多い長門市で、福永さんが好きな海の幸は、
“かじめ“ 「刻みかじめにお醤油をちょっと垂らして、炊きたてほかほかのご飯にのせて食べるのがおいしいんです。ごはんが何杯でもいけちゃう!ごはんのお供No1ですね。」
「山の幸とはちょっと違うのかもしれないけど、鶏肉が大好きです。長門市は“長州どり”が有名で、ほんとに新鮮で美味しい鶏肉が安く買えるから、いいところだなって(笑)。」
海のイメージが強い長門市ですが、福永さんの好きな長門市の風景は、実家の近くにあるなんてことのない山の景観。新緑の今の季節は、いろんな木々がとても鮮やかで、季節によって様々な表情を魅せてくれるその山を見ると、なんだかホッとするそうです。

※かじめ・・・海草の一種。長門市北浦産の荒波で育った良質のかじめを天日干しし、刻んだ”刻みかじめ”は、磯の香りが豊かで、独特の粘りに、ファンの多い海藻です。

   
(福永さんのごはんのお供No1”刻みかじめ”。長門市名物長州どりのやきとりも大好き。)

(今日も山が笑ってるなぁって、春になると毎年思うそうです。)

これからの「やりたい」こと。

新型コロナウィルスの影響で一気に推奨されたテレワークですが、もともと筆文字が得意な福永さんはコロナ禍になる以前から、タイトル書きなどの自宅でできる仕事もしています。今まで培ったスキルを活かして、空間デザイン的なこともやりたいとのことですが、今はやはり子育てを一番に考えているそうです。「ありがたいことに、いろんな方から声をかけてもらうけど、今は子どもとの時間を大切にしたいなって思ってて。なので、とりあえず今は子どもが楽しめるように、自宅前の広い敷地に公園を作ろうかなと思っています。」自宅前の広場にはご主人と一緒に作ったという、シーソーと滑り台がすでに設置されており、次はブランコを作る予定だそう。「第2の長門市総合公園を目指してます。」と福永さんは笑っていました。

  
(福永さんの書く筆文字。福永さんが手がけた長門市ケーブルテレビ局のセット。)
  
(ここを第2の長門市総合公園にしようと思っています。パンを買いに来た子ども達も遊ぶことができます。)

これから移住される方へのメッセージ

「自分一人が生きていくだけなら東京でもよかったんです。でも、自分が田舎の自然の中でのびのびと育っているから、ボール遊び禁止の公園を東京で見て、自分がイメージする子育て環境と違いすぎて、東京で子育てをする自分が全く想像できなかったんです。」
「自分が思い描く子育てが出来る環境がここ、長門市だったんです。私が思う東京は直線が多い世界。子どもには、綺麗に作られた線の中じゃなくて、ちょっとくらい曲がったところで、生きていって欲しいと思っています。

長門市で、のびのびと子育てを楽しみながら、自分の「やりたい。やってみたい。」ことを次々に実現されている福永さん。これからの活躍も楽しみです。今後も応援していきたいと思います。